2012年3月15日木曜日

「大丈夫 大丈夫」を歌うという事

今週の金曜日は吉祥寺スターパインズカフェで
「ORITOトリビュートライブ 2012」が開催される。
今夜はゲネプロのスタジオに行き、打ち合わせをしがてら
出演の皆さんの熱い歌と演奏を先に堪能させてもらった。

こうして実際に生で聴くと、自分の気持ちも昂ってくるし、
1年前のライブレコーディングの頃の情景も蘇ってくる。
余震が続き、計画停電もある中でのライブだった。

トリビュートアルバムの中に収録されたFREEFUNKとしての参加曲は
「大丈夫 大丈夫」という曲だ。
この曲はORITOさんのアルバムとしては実質ラストとなった
「団子と珈琲」にWild Dandelionでのライブ音源が収められている。

ORITOさんとは生前、この曲のスタジオ録音を進める話をしていた。
僕らはその前に、すでに「Our Beat 鮑の艶話」のデモ音源を一緒に作成していたのだが、
あるきっかけでORITOさんは僕らとこの曲を一緒にスタジオで録音しよう、と思ってくれたのだ。

そのきっかけは、もう5年ぐらい前、
僕が仕事およびその環境に行き詰まっていた頃だった。
自分のおかれている状況に複雑な想い、絶望的な気持ちになりながら
ふとORITOさんの「大丈夫大丈夫」のDEMO音源を家で聴いた瞬間、
とてつもなく心の深い所にまで染みてきたのだ。
その時だか翌日だかに、ORITOさんに直接話したのを憶えている。

ORITOさんは僕の話を聞いて、何度も感謝の意を示してくれたのだが、
それから数日経たある日、この曲をフリーファンクと録音してみたいと言ってくれた。
またその頃には、(結果的にORITOさんと最後の共演となってしまった)三茶での企画ライブへの
ゲスト出演も快諾いただき、そこでもプレゼンテーション的にこの曲を演奏しようと言う事になったのだ。
そのライブにはORITOさんがマネージメントを托した
SESの鈴木康蔵さんも来られる事がわかっていたので、
いわば鈴木さんに対してのプレゼンという位置づけでもあった。

ライブに向けたリハーサルを、
普通の音楽スタジオでORITOさんと一緒にやったのだけど、
それはとても面白いリハだった。

ライブに向けたリハだというのに、ORITOさんの頭の中ではもう、
録音をする事を前提にしたオーダーがどんどん出てくるのだ。
「ギターはワウ使って指でつま弾くようにしてほしい」
「ストリングスでリフを作ってほしい、音色は古くさいストリングスの感じ」
「ベースはもっとこもった感じで」
極めつけはこんなオーダー
「ドラムのキックの音は緩めにして、現代風じゃない音で」

普通、ライブのセットの中で、ある曲だけキックの音作りを変える為に
皮を緩めたりすることは無い。
ギターやベースなら、楽器を取り替えたりエフェクターを切り替えたりは可能だけど。
おそらくORITOさんの中にはもう、この曲への具体的な世界観やアプローチが見えているのだろうと思った。

以降、この曲を演奏するときにはあの日のORITOさんとのリハーサルで言われたオーダーや
感じた世界観を常に意識するようにしてきた。
そして、それを基準にした演奏をその後も続けていった。

先のトリビュートアルバムにおいて「大丈夫 大丈夫」を収録することになった時、
スタジオで僕らはかなり議論をした。
オリジネーターであるORITOさんを失ったいま、この曲を演奏するというのはどういう事なのか。
フリーファンクの世界観、サウンドにもっと引き寄せる事でこの曲が活きるのではないかと。

それまで固定化されつつあったアレンジを全面的に見直し、
オーダーされた事を基準にしつつも、フリーファンク流儀にしてみる事にしたのが、
あのトリビュートアルバムに収められたアレンジというわけ。

ファンクバンドらしく、ホーンはより全面に出してみたし、
ギターはオーダーされた事を意識しながらカーティス的つま弾きからスライの暴動的なエッセンスを加えてみた。
歌も芽芽ちゃんと話をして、あのときのORITOさんからのオーダーはどうだったのか、
新しいアレンジに対してはどうするのが良いのかをすごく話した。

トリビュートライブに参加させてもらう一員として誇りを持っていうなら、
僕らはこの1年、毎回のように「大丈夫大丈夫」を演奏してきた。
トリビュートライブに限らず、自分たちのレパートリーとして
文字通り歌い継いできたという自負がある。
それこそが究極的なトリビュートだという気持ちもある。

素晴らしいシンガーの皆さんや演奏者の皆さんと一緒に、
堂々と自分たちの曲として「大丈夫大丈夫」を演奏し、届けたい。

トリビュートアルバムを収録した2011年4月の時点で、
本当にこの曲の持つ意味は大きかった。
「頑張らなくて良い」
「庶民の絆」
「平凡な暮らしこそ理想」
今ではあちらこちらで目にするような言葉だらけだが、
この曲は震災がおこるずっとずっと前に歌われたものなのだ。

あれから1年。
僕らも演奏をし続け、よりフリーファンクらしくなってきたこの曲を是非聴いてほしい。

我々はあいにく東京だけの出演だけど、
16日金曜日、吉祥寺で待っています!

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